【天雲の憧憬 ヒサメ・タヅナキ】バックストーリー
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「海を渡った先に、大きな国があるらしいんだ」
ヒサメの弟は、そう言って飛び立った後、ついに戻っては来ませんでした。
生まれてから今まで、ヒサメはこの村を出たことがありません。
小さいながらも豊かな村で、何一つ不自由することなく、ヒサメは生きてきました。
「せっかく僕達には翼があるのに、どうしてヒサメ姉さんは飛ぼうとしないんだよ」
「こんなに大きな世界が広がってるんだ、僕たちは外に目を向けるべきなんだ」
ヒサメはそう言われる度に、悲しそうに笑うだけで、まじめに取り合おうとしませんでした。
代わり映えのしない小さな村だけで終わる生活に、
何一つ不満を感じなかったヒサメにとって、外の世界は怖いものとして映っていたのです。
「いってらっしゃい」
それが、ヒサメが弟に言った最後の言葉でした。
およそひと月が経ったあと、海の向こうから届いた手紙には、
弟の不幸が記されていたのです。
どうせ、すぐ戻ってくるんだから
――大きな翼を見送った日を思い出しながら、ヒサメは声が枯れるまで泣き続けました。
けれども、どれだけ泣き続けても、旅立った弟は帰って来なかったのです。
海が見える岬の端。彼が憧れていた大きな世界が見える場所に、
ヒサメは小さな墓を作りました。
朝露に濡れた墓前に、ヒサメは自分の羽根をひとつ供えると、
強く地面を蹴って、海に身を投げました。
死のうとしているわけではありません。彼女は決意したのです。
翼をひろげて、空気を掴んで、力強くはばたくと、
落ちた速度と同じ速度で、ヒサメは天高く舞い上がります。
弟の憧れた世界を、私も見てみたい。
そして叶うなら、私の物語が終わった後に、それを弟に話してやろう。
彼女は強くそう思いました。
ヒサメはそれから、泣くことをやめました。
ヒサメの泣き声を聞いて、空の向こうへ消えていった弟が悲しまないように。
力強く羽ばたく彼女の頬には、涙のあと。
朝焼けに燃える海の向こうへ、彼女はもういちど力強くはばたきました。
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ヒサメの弟は、そう言って飛び立った後、ついに戻っては来ませんでした。
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「いってらっしゃい」
それが、ヒサメが弟に言った最後の言葉でした。
およそひと月が経ったあと、海の向こうから届いた手紙には、
弟の不幸が記されていたのです。
どうせ、すぐ戻ってくるんだから
――大きな翼を見送った日を思い出しながら、ヒサメは声が枯れるまで泣き続けました。
けれども、どれだけ泣き続けても、旅立った弟は帰って来なかったのです。
海が見える岬の端。彼が憧れていた大きな世界が見える場所に、
ヒサメは小さな墓を作りました。
朝露に濡れた墓前に、ヒサメは自分の羽根をひとつ供えると、
強く地面を蹴って、海に身を投げました。
死のうとしているわけではありません。彼女は決意したのです。
翼をひろげて、空気を掴んで、力強くはばたくと、
落ちた速度と同じ速度で、ヒサメは天高く舞い上がります。
弟の憧れた世界を、私も見てみたい。
そして叶うなら、私の物語が終わった後に、それを弟に話してやろう。
彼女は強くそう思いました。
ヒサメはそれから、泣くことをやめました。
ヒサメの泣き声を聞いて、空の向こうへ消えていった弟が悲しまないように。
力強く羽ばたく彼女の頬には、涙のあと。
朝焼けに燃える海の向こうへ、彼女はもういちど力強くはばたきました。
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